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アジア太平洋障害者の10年(2013-2022)に関する閣僚宣言

私たち、国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の加盟国政府および準加盟国政府の閣僚および代表は、2012年10月29日から同年11月2日まで大韓民国・インチョンにおいて開催された「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合」に集まり、

「障害者に関する世界行動計画」[1] を採択した1982年12月3日付け国連総会決議37/52および「障害者の機会均等化に関する標準規則」を採択した1993年12月20日付け国連総会決議48/96において、障害者が開発のあらゆる側面で主体および受益者として認識されていることを想起し、

2008年5月3日に効力を発生することとなる「障害者の権利に関する条約」およびその選択議定書を採択した2006年12月13日付け国連総会決議61/106をあわせて想起し、

障害者を含む貧困層および困窮した状況下で生活する人たちに政策および活動の重点を置き、その人たちがミレニアム開発目標達成に向けた進展から利益を享受するようにしなければならないことをなかんずく認識する「約束を守る:ミレニアム開発目標の達成に向けた団結」と題された2010年9月22日付け国連総会決議65/1をさらに想起し、

「ミレニアム開発目標およびその他の国際的に合意された障害者関連の開発目標に関するハイレベル会合」を、「さらなる前進へ:2015年およびそれ以降に向けた、障害インクルーシブな開発課題」を全体テーマとして各国の政府代表レベルで2013年9月23日に開催することを国連総会が決定したこと [2] を歓迎し、

人間の安全保障について共通理解に合意したことを定め、なかんずくすべての個人とりわけ脆弱な人々が恐怖からの自由と欠乏からの自由を有するとともにあらゆる権利を享受し人間としての可能性を開花させる機会を平等に有することを明記した2012年9月10日付け国連総会決議66/290をあわせて想起し、

この種の地域10年計画を世界ではじめて宣言した「アジア太平洋障害者の10年」(1993-2002)に関する1992年4月23日付けESCAP総会決議48/3をあわせて想起し、

「アジア太平洋障害者の10年」(1993-2002)をさらに10年(2003-2012)延長することを宣言した、21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーな権利に基づく社会の促進に関する2002年5月22日付けESCAP総会決議58/4をさらに想起し、

委員会が加盟国政府および準加盟国政府にびわこミレニアム・フレームワーク実施への支援をなかんずく要請した「アジア太平洋障害者の10年」(2003-2012)の間に採択された「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーな権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の地域内での実施に関する2003年9月4日付けESCAP総会決議59/3を想起し、

「アジア太平洋障害者の10年」(2003-2012)の最終年である2012年に「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」および「びわこプラスファイブ」の実施に関する評価のためハイレベル政府間会合を召集することを定めた、「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」および「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーなかつ権利に基づく社会に向けたびわこプラスファイブ」の地域内での実施に関する2008年4月30日付けESCAP総会決議64/8をあわせて想起し、

ハイレベル政府間会合につながる準備プロセスにアジア太平洋地域の障害者団体を含むすべての主要なステークホルダーが関与することを奨励した「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合」に向けた地域での準備に関する2010年5月19日付けESCAP総会決議66/11をさらに想起し、

「アジア太平洋障害者の10年」(2013-2022)を宣言するとともに、加盟国政府および準加盟国政府に対して、ハイレベル政府間会合に積極的に参加すること、そして「障害者の権利に関する条約」に定められた諸原則および義務に基づく「10年」を実施する指針となる戦略的な枠組みを検討および採用することを促す2012年5月23日付けESCAP総会決議68/7 を想起し、

『障害に関する世界報告書』の推計によれば、世界人口の15%が何らかの形で障害を持っており、これはアジア太平洋地域では障害者が6億5千万人いることに相当し、そのうち80%が開発途上国に暮らしていること [3] に留意し、

1993年から2012年にわたって2度の「アジア太平洋障害者の10年」が実施される過程で、ESCAP加盟国政府および準加盟国政府が、とりわけ政策的・制度的な関与や法制度およびエンパワーメントにおける新たな進展を通じて、インクルーシブな開発に向けた権利に基づくアプローチのための基盤を確立する観点から達成してきた進歩を歓迎し、

市民社会、とりわけ障害者の当事者団体および支援団体が、多様な障害者の権利に関する継続的な啓発活動、良好な実践例の採用、政策的な対話への関与などを通じて達成してきた進歩に感謝とともに留意し、

太平洋地域のリーダーたちが、ポート・ヴィラで開催された第41回太平洋諸島フォーラムにおいて、2010年8月5日付けのコミュニケ [4] を通じて、障害者の権利を保護・促進し、障害インクルーシブな太平洋地域を築き上げるための枠組みを提供し、「障害者の権利に関する条約」および障害に関連するその他の人権文書の実施に向けたステークホルダーの関与を強化する「障害に関する太平洋地域戦略2010-2015」[5] を強く支持していることを念頭に置き、

インドネシア・バリで開催された第19回ASEAN首脳会議が、ASEAN地域の経済・政治保障・社会文化の全分野を通じたASEANの諸政策・諸制度のなかで障害者が有効に参加でき障害の観点が主流化されることをめざして、「ASEAN地域に暮らす障害者の役割と社会参加の強化に関するバリ宣言」[6] を2011年11月17日付けで採択し、あわせて2011~2020年を「ASEAN障害者の10年」にすると宣言したことに感謝とともに留意し、

大韓民国・プサン(釜山)で開催された「第4 回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム」が、2011年12月1日付けで「効果的な開発協力のための釜山パートナーシップ」 [7] を採択し、効果的な開発に向けた協力の基盤を形成するために障害に関する国際的な関与が重要であることを認識したことを歓迎し、

「バリアを撤廃し、インテグレーションを促進する」をテーマとする北京フォーラムが、なかんずく「障害者に関する権利条約」を推進し2015年以降多様な部門における国際連合開発課題に障害の側面を組み入れる意義を認識した「障害インクルーシブな開発に関する北京宣言」[8] を2012年6月8日付けで採択したことをあわせて歓迎し、

「障害者の権利に関する条約」を実施するための包括的で分野横断型の貧困削減戦略を提供する、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)、国際障害・開発コンソーシアム(IDDC)の共同文書である「地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)ガイドライン」 [9] に留意し、

「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」の成果文書として国際連合加盟国が2012年6月22日付けで採択した「私たちが望む未来」[10]において、持続可能な開発への関与の実現を加速させる対策としてなかんずく障害者を挙げてそのインクルージョンの権利を認識したことを想起し、

アジア太平洋地域の障害者が経済的・社会的な機会や政治参加への公正なアクセスの権利を有することが保障されるためには、いまだに数多くの課題に対処しなければならないことに懸念とともに留意し、

アジア太平洋地域で進行している急速な人口高齢化の長期的な結果に関して障害の課題に対処する必要性を強調し、

過去30年間でもっとも多くの自然災害が発生しているアジア太平洋地域において、障害者が災害の被害を受ける度合いが不均衡に高いことに深刻な懸念とともに留意し、

障害者に対するネガティブな偏見や差別的態度がいまだに横行していることにあわせて留意し、

物理的環境、公共交通機関、知識、情報およびコミュニケーションのアクセシビリティを高めるための新しい技術を活用するなど、障害者の権利を促進する機会が高まりつつあることを心に留め、

新たな「アジア太平洋障害者の権利を実現する10年」(2013-2022)の間にアジア太平洋地域のすべての障害者の権利を保障、促進および下支えするインクルーシブな社会の地域的なビジョンの達成を加速させる行動を引き起こす媒介となるべく、添付の通り「アジア太平洋障害者の『権利を実現する』インチョン戦略」(以下、インチョン戦略と称する)を採択し、

政府が、障害者の権利を保障、促進および擁護し、ならびに多様な部門において2015年以降の開発計画に障害の観点が含まれるよう促進するために中心的な役割を果たすことを認識し、

2022年までにインチョン目標およびターゲットに到達するための行動を促進することで本宣言およびインチョン戦略を実施することを誓い、

以下に掲げるように、関係するすべてのステークホルダーが、本宣言およびインチョン戦略の実施に貢献する全地域のパートナーシップに参加するように呼びかけ、

a 東南アジア諸国連合(ASEAN)、経済協力機構(ECO)、太平洋諸島フォーラム(PIF)および南アジア地域協力連合(SAARC)といった、小地域の政府間組織が、ESCAPと連携しながら、障害インクルーシブな開発に向けた小地域レベルの協力関係を促進および強化すること。

b 開発協力機構が、その政策、計画および制度について、障害インクルーシブな度合いを強化すること。

c 世界銀行およびアジア開発銀行が、その技術的・財政的資源を、アジア太平洋地域において障害インクルーシブな開発が促進されるように活用すること。

d 制度、基金および専門機関を含む国際連合システムとESCAPとが共同で、国際連合開発グループ(UNDG)および国連カントリーチーム(UNCTs)といった、国レベル、地域レベルおよび国際レベルでの既存の諸機関を有効に利用するなどして、アジア太平洋地域において障害インクルーシブな開発を遂行すること。

e 市民社会団体、とりわけ障害当事者団体および障害者支援団体が、多様な障害者グループと連携し政策・制度の開発および実施に貢献するなどして、障害者の要望やニーズに対する継続的な呼応を醸成するために「10年」のモニタリングおよび評価に実質的な参加を果たすこと。

f 障害当事者団体および障害者支援団体が、インチョン戦略に関わる政策決定プロセスに積極的に参加すること。

g  民間部門が、障害インクルーシブな事業の実践を促進すること。

ESCAP事務局長に対して、以下の事柄を要請し、

a 加盟国政府および準加盟国政府が、ほかの関係団体と協力して本宣言およびインチョン戦略を完全かつ有効に実施できるように、優先して支援を行うこと。

b 本宣言およびインチョン戦略を完全かつ有効に実施できるようにステークホルダーの関与と、参加を奨励すること。

c 本ハイレベル政府間会合の成果文書をESCAP総会第69回セッションに提出し、承認を得ること。

d 本ハイレベル政府間会合の成果文書を、2013年9月23日に召集される予定である「ミレニアム開発目標およびその他の国際的に合意された障害者関連の開発目標に関するハイレベル会合」に、国連総会議長を通じて提出すること。

e 以後、「10年」が終了するまで、本宣言およびインチョン宣言の実施について進捗状況を3年ごとにESCAP総会に報告すること。[訳注:原文の見出しはdになっている]

f 必要条件の報告を含め、障害者の「権利を実現する」インチョン戦略を実施するためのロードマップを策定し、第70回総会会議に提出すること。

「10年」の中間時点(2017年)で「10年」の進捗状況を検証し、「10年」の最終年(2022年)を締めくくるために、第69回委員会会議においてハイレベル政府間会合の召集を決定することを勧告する。

 

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1 A/37/351/Add.1および Corr.1, annex, sect. VIII, recommendation 1 (IV)。

2 2011年12月19日付け国連総会決議66/124 of 19 December 2011を参照。

3 World Health Organization/World Bank, World Report on Disability (Geneva: World Health Organization, 2011)(世界保健機関・世界銀行『障害に関する世界報告書』ジュネーブ:世界保健機関、2011年), p.29。

4 www.forumsec.org/resources/uploads/attachments/documents/2010_Forum _Communique.pdf. を参照。

5 太平洋諸島フォーラム事務局、文書PIFS(09)FDMM.07 (www.forumsec.org.fj より入手可能).

6 www.aseansec.org/documents/19th%20summit/Bali_Declaration_on_Disabled _Person.pdf を参照。

7 www.aideffectiveness.org/busanhlf4/images/stories/hlf4/OUTCOME_ DOCUMENT_-_FINAL_EN.pdf を参照。

8 E/ESCAP/APDDP(3)/INF/5 を参照。

9 www.who.int/disabilities/cbr/guidelines/en/index.html を参照。

10 国連総会決議 66/288 of 27 July 2012 を参照。